
今まで超優良企業ばかり分析していましたが、我が国の先行きをなんとなくでも持っていく中で大企業を調べることは不可欠だと考えました。
今回は一時、米鉄鋼生産量の3分の2を占めたU.S.steelを買収した日本製鉄株式会社を分析していきます。とはいいつつ、いつもの分析方法とは異なり「今後どんな方針を取っていくか」を主軸において、考察も交えてお伝えします。
日本製鉄の強み
日本製鉄という会社は皆さんご存じだと思いますので、基本情報説明は省略して早速強みから分析していきます。
特許・研究開発力
特許の数量と影響力を元に選出される「世界で最も革新的な100の企業・研究機関」に9年連続で選出されています。国内外の約4000の特許が日鉄の競争優位性を保つノウハウや技術力を形成しているんです。
高付加価値製品
かつて「Made in Japan」が世界を席巻していましたが、外国に安さで負けて終わりを告げたのはご存じだと思います。それは鉄鋼も例外ではありません。
中韓等が生産量で台頭する中、日鉄は量ではなく質での差別化を図っています。軽量かつ高強度の鋼板は、自動車の軽量化・安全性向上の需要を取り込んでおり、競争力を維持しています。
この高付加価値作戦がどうなっているのか。実際、14年比では粗鋼生産量は3割減にもかかわらず、23年度の利益は14年を上回っています。
この背景には先ほど紹介した研究開発力にあるんです。U.S.steelはこれがなかったから衰退していったんです。分析前は「鉄鋼なんて資材集めて溶接して細かい加工して終わり」なんて思っていましたが、実際は製造条件だったり加工技術によって性能差が大きく変わるんですって。日本のモノづくりはまだまだ健在です。
経営戦略 ~国内で収益基盤を強化し、海外で成長を取り込む~
日本製鉄は、「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」を掲げ、2030年度までに1兆円の連結実力利益、2031年度以降にはグローバル粗鋼1億トン体制を目指しています。
国内では、これまで進めてきた生産再編や大型投資の成果を本格的に収益化する段階へ移行します。
具体的には、
・新鋭設備投資の立ち上げ
・製造ラインの役割明確化
・集中生産による効率化
・高級鋼化やソリューション提案強化
・グループ一体での収益力向上
を進め、競争力をさらに高める方針です。
特に薄板分野では、自動車用鋼板や電磁鋼板など高付加価値分野へ経営資源を集中。製造拠点ごとの役割を整理し、生産・物流ネットワーク全体を最適化することで、コスト競争力向上を狙っています。
こうした戦略を実行できる背景には、前経営計画までに進めてきた巨額投資があります。投資CF総額は、15〜20年度の約2兆円から、21〜25年度では約4.3兆円へ倍増。次世代熱延設備や電磁鋼板設備への投資が既に進んでおり、今後は投資回収フェーズへ入ります。
また、損益分岐点を約40%引き下げるなど、国内事業の収益体質改善も進めてきました。
一方、海外では「米国・欧州」「インド」「タイ」を重点地域とし、グローバル成長戦略を加速しています。
米国ではU.S. Steel投資を通じて高級鋼市場へ本格展開。インドでは合弁会社の能力増強や新製鉄所建設を進め、高成長市場の需要を取り込みます。タイでは自動車向け薄板を中心にシェア拡大を狙っています。
これらによって、海外事業利益は2025年度見通しの1,150億円から、2030年度頃には5,000億円以上への拡大を目指しています。
経営戦略から分かった「Made in Japan復活策」
国内市場が縮小する中で、なぜ日本製鉄はここまで大規模な投資を続けるのか、疑問に思いました。あんな「私、国内にも海外にも投資しまくっとりまよ」みたいな経営計画なのに実は、かなり固定費を削減して設備も撤収しています。
それによって、粗鋼生産量は2014年比で約3割減少している一方、2023年度利益は2014年を上回っていますし、損益分岐点比率を40%引き下げて黒字化しやすくすることで、筋肉質な経営が出来ています。
一方で、成長については完全に海外へ軸足を移しています。
米国ではU.S. Steel投資を通じて世界最大級の高級鋼市場へ本格参入し、インドでは将来的なインフラ・自動車需要拡大を取り込み、タイでは自動車向け薄板市場の強化を進めています。
要は国内戦略として、高収益化・効率化の旗を掲げているのに対して、海外では成長市場の取り込みの旗を掲げています。つまり、役割分担です。
個人的に面白いと思ったのは、国内事業が海外成長のための土台になっている点です。
国内で利益体質を改善し、その資金を海外投資へ回す。さらに海外で得た利益を再投資し、グローバルで規模を拡大していく。これは日本をどう建て直すかを示しているようにも感じました。
