中1投資家の企業分析記

投資の芽を育てる企業分析記

2040年、日本は何で食べていくのか ~骨太の方針26 原案~

最近、国家安全保障財務諸表論の記事が多いですよね。ブログ名と反しているじゃないかという話なんですが。そんな国家安全保障財務諸表の数値を大きく左右することになるかもしれない、骨太の方針を読んで整理します。

 

 

骨太の方針2026(原案)の要約

AI・半導体・防衛・宇宙などへの成長投資を進め、経済成長と賃上げを実現する。
経済安全保障やサイバー・防衛・国土強靱化を強化し、国民の安全・安心を高める。
責任ある積極財政の下で、持続可能な社会保障改革と財政運営を進める

※Chat GPTより
 

機械産業中心からの転換

自動車・鉄鋼・造船・機械といった「モノづくり」によって世界第2位の経済大国まで成長しました。高品質で価格も比較的安い「Made in Japan」が世界中で評価され、日本経済を支えてきたことは皆さんご存じだと思います。

しかし、現在の骨太の方針を見ていると、政府は次の成長産業を見据えているように感じます。

例えば

・スタートアップ

・AI,半導体

・脱炭素技術

・一次産業の品種改良

など、「技術そのもの」を育てる政策が非常に多く盛り込まれています。ただ、製造業も軽視していません。実際、製造業データや製造業技術を用いたフィジカルAIの開発や南鳥島レアアースで必要になってきます。

ただ、今回の骨太の方針を読んで感じたのは、日本は「モノを作る国」から「新しい技術を生み出す国」へと少しずつ軸足を移そうとしているのではないかということです。過去に日本は素晴らしい技術を開発し続けてきました。その日本の強みを生かして、再び成長の原動力にしようとしているのではと考えます。

この方針が成功すれば、日本経済の中心産業は、これまでの機械産業に加え、AI・半導体・宇宙・量子技術などが新たな柱になっていくかもしれません。

 

国家安全保障財務諸表論から見ると

資産

知識資本 

AI・量子・半導体・宇宙・次世代情報通信などへの研究開発投資やスタートアップ支援により、日本の技術力や知的財産の蓄積が期待されます。

人的資本 

高度デジタル人材の育成やリスキリングの推進など、人への投資が拡充されることで、日本全体の競争力向上につながると考えられます。

自然資本 

重要鉱物の確保や海洋資源開発の推進が盛り込まれており、将来的に日本が利用できる資源基盤は強化されると考えられます。

外交ネットワーク資本 

同志国との経済連携や重要鉱物・エネルギーの供給網強化、自由で開かれた国際経済秩序の維持などが盛り込まれており、日本の外交・経済ネットワークはさらに強固になると考えられます。

 

負債

食料安全保障リスク 

食料安全保障の強化や農林水産業の生産基盤強化、安定供給体制の整備が盛り込まれており、食料供給リスクの低下が期待されます。

情報安全保障リスク 

サイバーセキュリティやAI・次世代通信への投資によって、情報分野の安全保障は強化されます。

産業・経済安全保障リスク 

重要技術・重要物資の国内確保や供給網の多元化によって、海外依存によるリスクは小さくなると考えられます。

災害・地政学リスク 

防災・減災、国土強靱化、防衛力の強化などが盛り込まれており、自然災害や国際情勢悪化への対応力向上が期待されます。

【定点観測】経済指標から日本経済の流れを読み解く 2026年6月

今回は自分で一次情報を触って、今の日本経済はどんな感じなのか、これを読み解くためにこれから毎月末付近に「月例経済報告・景気動向指数・実質賃金指数・消費者物価指数・失業率・有効求人倍率」をまとめて、我々の生活にどんな影響があるのか、慣れてきたら少しずつではありますが、企業分析&投資ブログとして、企業業績や投資妙味はなにか、これらを分析していきたいと思います。

 

月例経済報告 ~日本政府の公式見解~

日本政府の見解として、今の我が国の景気として

と4ヵ月連続の文言維持となりました。

石油調達の進捗

月例経済報告では、中東情勢の影響が不安視されていましたが、先月作成された経済産業省の資料を見ますと

中東とアメリカ、半々の調達で国家備蓄を放出せずに輸入で賄えるようになったとのこと。何かしらの影響で輸入が15%減少したとしても、備蓄によって来年度末までは供給ができると発表しています。

出典:中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保の対応状況

 

因みに、私の国家安全保障財務諸表ではこの情報は負債の欄のエネルギー安全保障に影響します。今までは5割の代替調達だとか、かなり危ない状況でしたが、よっぽどのことがない限り石油危機はあり得ませんので、負債は減少すると考えられます。

 

景気動向指数 ~様々な情報の組み合わせ~

上にある見出しのざっくり説明に入りきらなかったので、景気動向指数について補足しますと、現在の経済の確認将来の経済予想の時に使うものです。他にも過去の経済状況を知るための遅行指数というものがありますが、これはこの記事の趣旨に反するので割愛します。

先行指数

先行指数とは、将来の経済予想に使うものです。伸びポイントは0.7pと先月に比べて0.4p鈍化しましたが、明らかにトレンドが変わったように思えます。この指数は「景気、良くなるよ。期待してね」と言っています。

 

一致指数

こちらは先月の上昇幅から1pプラスの1.3pでした。こちらのトレンドはあまり変わっていません。

先行指数も一致指数も上昇幅が拡大した理由は足を引っ張っていた製造業の調子が戻ってきたことにありそうです。「実質機械受注」も「投資財出荷指数」も上昇しています。両方とも商品を出すことに関する指数です。要は設備投資です。

今まで両指数ともマイナス二桁と、かなり低迷していたんですがプラスに転じたことで製造業が元気になり、基幹産業ですからそこからさまざまな産業に波及していくかもしれません。単月ですから、来月以降に期待です。

 

消費者物価指数

先月の全国結果が出ていないので、全国とほぼ同じ動きをする東京都の消費者物価指数を見ます。総合指数・生鮮食品を除く総合指数・生鮮食品、エネルギーを除く総合指数いずれも日銀の物価目標である2%を下回りました。

 

上の指標は欧米が物価の判断でよく使うものなんですが、日本は0.7%上昇と物価目標を大きく下回りました。日銀は追加で0.25%、政策金利を引き上げましたが、現状、適度なインフレ(どの指数でも)ですので、政府の「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要だ」というのは間違ってはいないという感じです。

 

実質賃金指数

4月の実質賃金は2.0%と4か月連続のプラスです。

これまでは給料が1円増えたけど、飲み物は2円値上がりして、実質的に生活はよくなっていませんでしたが、今は給料が2円増えて、飲み物が1円値上がりして、購買力が上がった、という格好です。

春闘の賃上げ率5.01% 3年連続5%台の高水準 連合が最終集計

こんなニュースが最近ありましたが、企業の賃上げが定着してきているようです。まぁ賃上げをしすぎて、中小企業がバタバタと倒れたら本末転倒ですので無理しすぎずに物価上昇を上回る賃金上昇を続けてほしいです。

 

完全失業率・有効求人倍率

完全失業率は前月と変わらず有効求人倍率は0.01倍悪化しました。まぁ、さほど変わってないですね。

ざっくり、1000人中25人が失業者で求人数は1人あたり約1.2件の売り手市場なので、雇用環境は比較的良好なんじゃないかと思います。

先ほども触れましたが、利上げによって雇用市場が悪化する可能性もありますので引き続き注視していきます。

 

まとめ

定点観測4回目、指標だけではなく今、官民がどう動いているのかも見ていく必要を感じました。私が今後注目したいのは、金融政策と骨太の方針です。

指標を見る限り、利上げの理由はないと感じるので来月までに植田総裁の狙いを確認しつつ、さらなる利上げの可否に注目します。

そして、骨太の方針です。例年はその年の方針を示しますが今回は2040年度までの中長期戦略を発表するっぽく、370兆円超の官民連携の投資が発表されるとのこと。程度ではなく、「超」と言っているので400兆円になるかもしれません。

これが成功すれば第二次高度経済成長になると言う専門家もいらっしゃるので投資家としても、一国民としても注目です。

【鉄鋼業分析】日本は再び「鉄」で世界を驚かせる。

前回の日本製鉄の記事で「日本製鉄は海外への大規模投資を進めています。復活への道を歩んでいますよ」のような内容を書きましたが、国家安全保障財務諸表の構成を詰めているうちに「ほかの企業も同じような投資をしてたら、高付加価値製品が安価になって結局、中韓に負けたままじゃ?」と疑問を抱いたので、主要3社の投資・成長戦略等々をざっと整理して、日本の鉄鋼業は復活できるのか、独自の考察も踏まえてお伝えします。

 

 

 

3社の戦略等と勝ち筋

日本製鉄

・自動車向け・脱炭素向けなどの高付加価値製品で中韓に勝利へ。

・2031年度以降に粗鋼量1億トンへ。

・「米国・欧州」「インド」「タイ」を重点地域に。

・前年度より約2.3兆円(約84%)投資増。

→安価な鉄鋼は中韓に勝てない。高付加価値製品を大胆に生産して、世界に再び花を開かせる。

JFEホールディングス

・日鉄と同じような高付加価値製品。

・21年から50年まで総額5兆円の二酸化炭素削減投資。

・超革新技術開発による脱炭素社会実現への取組。

・北米・印の巨大鉄鋼企業との連携。

・前年度より約1600億円(約37%)投資増。

→脱炭素への動きで需要が増大する分野に勝ち筋を見出す。

神戸製鋼

・鉄鋼に加えアルミ・機械等を組み合わせた事業構成。

・ASEAN・北米など海外市場を拡大。

・成長投資と財務健全性を両立する方針。

・前年度より約400億円(約35%)投資減。

→鉄鋼だけでなく、様々な種類を手掛けることで1つの顧客に多く販売する「顧客密着型」

 

日本鉄鋼業はもう一度覇権を握れるか

3社の企業を比較して、しばらく考えていたら、最初に抱いた「ほかの企業も同じような投資をしてたら、高付加価値製品が安価になって結局、中韓に負けたままじゃ?」という疑問は半分正解、半分不正解なのではという結論に至りました。

Made in Japanが世界を席巻した理由は高品質なのに欧米より価格が安かったからです。今はどの企業も莫大な金額をかけて高付加価値製品の製造で生き残りを図ろうとしています。

→高付加価値製品価格は下がる

→中韓の激安・品質そこそこ製品と日本の少し高い・高品質製品が生まれる

→AIの台頭によって世界中、どの会社の製品も安価になり、激安商品がゴロゴロ

→同じような品質な製品の価格差が縮まる

→安さで勝負していた中韓の競争力が失われ、すぐに高品質製品を開発するのは難しいため、技術力の高い日本の競争優位性が高まる

こんなシナリオになるかもしれません。かなり楽観的ですが、過去にDXによって情報網が一気に整備されて無駄が省かれたので、製造コストが下がったんです。じゃあ、今後のAX(AIトランスフォーメーション)によって、経費と製造間接費が一部削減でき、労務費がかなり削減できた場合、どの製品も同じような価格に下がると思います。あとは材料費を超安くして、安さで勝つか品質を超高めるかの二択です。

日本はAXが始める前から後者に取り組んでいるので、勝ち筋は十分あります。さらに、日本列島周辺には豊富な資源が眠っています。これを大量生産できたら、材料費も今まで以上に下がります。こういった根拠から、日本には大きな勝ち筋があるのではと考えることができます。

政府の情報力強化は費用か資産か ~成立法案から考える国家安全保障財務諸表~

国家安全保障財務諸表の説明は今までの記事で大体終わりましたので、残りの「実際、何をやれば上がるのか」というのを実例を用いて説明しようと思います。

そこで、今国会で成立した政権肝いりのインテリジェンス強化政策はどう影響するのか、これを説明していこうと思います。

 

 

国家安全保障財務諸表論基本記事↓

vuv-kigyobunseki.hatenadiary.jp

vuv-kigyobunseki.hatenadiary.jp

 

国家情報会議設置法

法律概要

これは、日本の情報機能を強化するための法律です。

この法律により、総理を中心として政府内の情報を集約・分析する「国家情報会議」が設置されます。また、内閣情報調査室を格上げした「国家情報局」がその情報を集めて、安全保障やサイバー攻撃、経済安全保障などに関する情報収集・分析能力の向上を目指します。

簡単に言えば、日本版CIAとまではいかないものの、これまで分散していた情報機能を強化して効率化、今まで捨てられていた情報や集められなかった情報を収集して、政府の意思決定を支える体制を整備する法律です。

財務諸表への影響

とはいったものの、まだ中身がありません。人材も仕組みもスキルも乏しいからです。仮に私が半導体工場を作ったとしましょう。ですが、製造の仕方が分からない、部門を整理できていない、ブランド力もない、こんなのすぐ破綻しますよね。まだ工場という箱を作っただけです。

これから人材・仕組み・スキルを磨いていくので、すぐには財務諸表に反映されません。ですから

ざっくりこんな動きになります。ただ、数年後日本が実績を積んでいって、かつ高市氏本人の自民総裁選公約であるスパイ防止法や、先の衆院選での自民党公約である対外情報機関の設置が完了したら

こんな形に動いていきます。

表には目的である「情報収集・分析能力の向上」について流れを書いていきましたが、制度資本も「政府内の情報を集約」つまり情報共有能力も向上して増えます。

そして、各種情報機関によって、もし台湾情勢が本格的に厳しくなっていく兆候がつかめて必要な対応が出来たら。何十兆円、数百兆円もの損失を回避できるとすると、国家安全保障純資産を増加させる投資であると評価できる余地があります。

 

サイバー防御体制強化法制

法律概要

サイバー防御体制強化法制はサイバー攻撃による被害を未然に防ぐため、日本のサイバー安全保障体制を強化する法律です。

これまでの日本は、サイバー攻撃を受けた後に対応する「受動的な防御」が中心でした。しかし近年は、重要インフラや政府機関へのサイバー攻撃が高度化しているため、攻撃の兆候を早期に把握し、被害が発生する前に対処できる体制の整備が進められています。

この法制により、政府による情報収集・分析能力の強化、官民の情報共有の促進、重要インフラ事業者との連携強化などが図られています。

簡単に言えば、「サイバー分野の自衛隊」です。

財務諸表への影響

本法律に関しても、機能確立が必要なため

こんな動きになりますが、はっきり違うのは負債の欄です。この法律ははっきり防衛に関するものですから、安保リスクが小さくなります。

 

まとめ

普通の企業会計では、組織を設置すると全部費用計上スタイルです。ただ、国家安全保障財務諸表では能力さえあれば将来の安全保障能力を生み出す資産・投資として評価できます。

紹介したインテリジェンス系法律は日本が得意としていないものですから、二つとも同じような動き方をします。できるだけ早く用意すればするほど複利で効くような投資です。

 

国家安全保障財務諸表論:構成と根拠 負債編

今回は中学3年かけて完成させる「国家安全保障財務諸表」の構成についてお話しします。

 

基本記事↓

前回の記事↓

負債の評価基準

出典:企業会計原則

基本記事でも触れましたが、この企業会計原則の引当金計上要件が評価基準です。ただ、これはあくまでも企業の会計原則なので、一概に国家に適用できるとは限らないと考えました(詳しく後述)。そこで、資産と同様、国際機関の資料を漁ってみましたら

https://www.elibrary.imf.org/view/journals/022/0036/001/article-A012-en.xml#A12bx01

[偶発政府負債:隠れた財政リスク]という資料を見つけました。

日本語で「財政リスクには、直接的なものと偶発的なもの、また明示的なものと暗黙的なものが存在する。」と書かれていました。

先に「こうすれば」という結論ありきの研究になっているかもしれませんが、これを引当金計上の根拠とすることができるのではと考えました。

 

その定義を参考に国家安全保障財務諸表では

  1. エネルギー安全保障(暗黙的×偶発)
  2. 食料安全保障(暗黙的×偶発)
  3. 健康医療安全保障(暗黙的×偶発)
  4. 情報安全保障(暗黙的×偶発)
  5. 産業・経済安全保障(暗黙的×偶発)
  6. 災害・地政学的リスク(暗黙的×偶発)
  7. 公的制度等不安定リスク(明示的)
  8. その他(静かなる有事)(暗黙的×直接)

の8つで分類し、これを完成させたいと考えています。この負債は暗黙的×偶発の項目が中心になってくると思います。

 

なぜ企業会計原則注解18を根っことしないのか

負債計上の要件を引当金要件(企業会計原則注解18)にしないかと言いますと

・将来の特定の費用又は損失

・その発生が当期以前の事象に起因

・発生の可能性が高く

・その金額を合理的に見積ることができる

この4条件全てを満たす必要があるんです。3番目の「発生の可能性が高く」というのを盛り込んでしまうと、「今現在の発生確率は低いが、有事になると十二分あり得て、損失大。今のうちに準備しておかないと。」というものを計上できなくなります。国家がそういったことに備えることで、国体を保持しなければいけない以上、この財務諸表には適さないと判断しました。

それに対して

・直接的

・偶発的

・明示的

・暗黙的

という条件の上下ひとつずつ当てはまればいいわけですから、確率関係なくありとあらゆるリスクを計上出来て備えることが可能なんです。国家は企業と異なり、発生確率が低くても、起きた瞬間に国民の生命・財産・生活・経済を守るために対処しなくてはいけないので、発生確率を問わない方が好ましいんです。まぁ、そもそもこの文書を発行しているIMFは国家のリスクを扱う機関でもあるので、どっちにしろIMFから鰓バルざるを得なかったんですけどね。
ですから、基準は「偶発政府負債:隠れた財政リスク」のものを採用することに至った次第です。

今後2、3週間のブログ更新について

今週末に定期試験の3週間前に入りましたので、試験が終わり諸確認等が終わるまで、ブログ更新は停止させて頂きます。

私事ではありますが、ご理解のほど宜しくお願いします。

【大企業分析】日本製鉄株式会社 ~高付加価値化で挑む“Made in Japan”復活戦略~

今まで超優良企業ばかり分析していましたが、我が国の先行きをなんとなくでも持っていく中で大企業を調べることは不可欠だと考えました。

今回は一時、米鉄鋼生産量の3分の2を占めたU.S.steelを買収した日本製鉄株式会社を分析していきます。とはいいつつ、いつもの分析方法とは異なり「今後どんな方針を取っていくか」を主軸において、考察も交えてお伝えします。

 

日本製鉄の強み

日本製鉄という会社は皆さんご存じだと思いますので、基本情報説明は省略して早速強みから分析していきます。

特許・研究開発力

特許の数量と影響力を元に選出される「世界で最も革新的な100の企業・研究機関」に9年連続で選出されています。国内外の約4000の特許が日鉄の競争優位性を保つノウハウや技術力を形成しているんです。

高付加価値製品

かつて「Made in Japan」が世界を席巻していましたが、外国に安さで負けて終わりを告げたのはご存じだと思います。それは鉄鋼も例外ではありません。

中韓等が生産量で台頭する中、日鉄は量ではなく質での差別化を図っています。軽量かつ高強度の鋼板は、自動車の軽量化・安全性向上の需要を取り込んでおり、競争力を維持しています。

この高付加価値作戦がどうなっているのか。実際、14年比では粗鋼生産量は3割減にもかかわらず、23年度の利益は14年を上回っています。

 

この背景には先ほど紹介した研究開発力にあるんです。U.S.steelはこれがなかったから衰退していったんです。分析前は「鉄鋼なんて資材集めて溶接して細かい加工して終わり」なんて思っていましたが、実際は製造条件だったり加工技術によって性能差が大きく変わるんですって。日本のモノづくりはまだまだ健在です。

 

経営戦略 ~国内で収益基盤を強化し、海外で成長を取り込む~

日本製鉄は、「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」を掲げ、2030年度までに1兆円の連結実力利益、2031年度以降にはグローバル粗鋼1億トン体制を目指しています。

国内では、これまで進めてきた生産再編や大型投資の成果を本格的に収益化する段階へ移行します。

具体的には、

・新鋭設備投資の立ち上げ
・製造ラインの役割明確化
・集中生産による効率化
・高級鋼化やソリューション提案強化
・グループ一体での収益力向上

を進め、競争力をさらに高める方針です。

特に薄板分野では、自動車用鋼板や電磁鋼板など高付加価値分野へ経営資源を集中。製造拠点ごとの役割を整理し、生産・物流ネットワーク全体を最適化することで、コスト競争力向上を狙っています。

こうした戦略を実行できる背景には、前経営計画までに進めてきた巨額投資があります。投資CF総額は、15〜20年度の約2兆円から、21〜25年度では約4.3兆円へ倍増。次世代熱延設備や電磁鋼板設備への投資が既に進んでおり、今後は投資回収フェーズへ入ります。

また、損益分岐点を約40%引き下げるなど、国内事業の収益体質改善も進めてきました。

一方、海外では「米国・欧州」「インド」「タイ」を重点地域とし、グローバル成長戦略を加速しています。

米国ではU.S. Steel投資を通じて高級鋼市場へ本格展開。インドでは合弁会社の能力増強や新製鉄所建設を進め、高成長市場の需要を取り込みます。タイでは自動車向け薄板を中心にシェア拡大を狙っています。

これらによって、海外事業利益は2025年度見通しの1,150億円から、2030年度頃には5,000億円以上への拡大を目指しています。

 

経営戦略から分かった「Made in Japan復活策」

国内市場が縮小する中で、なぜ日本製鉄はここまで大規模な投資を続けるのか、疑問に思いました。あんな「私、国内にも海外にも投資しまくっとりまよ」みたいな経営計画なのに実は、かなり固定費を削減して設備も撤収しています。

それによって、粗鋼生産量は2014年比で約3割減少している一方、2023年度利益は2014年を上回っていますし、損益分岐点比率を40%引き下げて黒字化しやすくすることで、筋肉質な経営が出来ています。

一方で、成長については完全に海外へ軸足を移しています。

米国ではU.S. Steel投資を通じて世界最大級の高級鋼市場へ本格参入し、インドでは将来的なインフラ・自動車需要拡大を取り込み、タイでは自動車向け薄板市場の強化を進めています。

要は国内戦略として、高収益化・効率化の旗を掲げているのに対して、海外では成長市場の取り込みの旗を掲げています。つまり、役割分担です。

個人的に面白いと思ったのは、国内事業が海外成長のための土台になっている点です。

国内で利益体質を改善し、その資金を海外投資へ回す。さらに海外で得た利益を再投資し、グローバルで規模を拡大していく。これは日本をどう建て直すかを示しているようにも感じました。